tender is the night in light
夜 は や さ し
2018.12.21
quietroomの「室内映画賞」
 【 quietroomの「室内映画賞」2018 】
 
 ※できれば年末のお遊びくらいに読んでください。

 選考対象:2017年末~18年に新作として日本公開された作品より。部門は米国アカデミー賞に似せて、思いつくかぎり。あれがない、これがないはご容赦いただくと同時に、そんな話も大好きなのでご指摘やご感想もお気軽にどうぞ。(『A Ghost Story/ア・ゴースト・ストーリー』『2重螺旋の恋人』『アンダー・ザ・シルバーレイク』『バルバラ』『黙ってピアノを弾いてくれ』など、まだ観られていない作品がたくさんあります。――オゾン監督、私たちはあなたを愛しています。観れてないけど――)

 ひとつだけ言いたいことは、「まだ〇〇を観ていない」という状態は、最も幸せな、これから〇〇に出会う可能性を残している状態、ということです。何人からも薦められた『ア・ゴースト・ストーリー』をまだ観ていないこと、でもそれをこっそり来年観るんだ(―みんながちょっと忘れたころに―)って思っただけでわくわくしますよ。いい作品に早いも遅いもないですから、本記事を読んで観てみるきっかけになったり、またいつのどんな作品でも、quietroomの人に教えたいのがある!と思っていただければ嬉しいです。

 ここであらためて。「〇〇も知らないの?」という見下げた価値観には、私たちははっきりとノーを表明します。(これは映画だけじゃなく、全てにおいて、です。)「〇〇にこれから出会うなんて、そんな幸せなことはないよ!」と言える世の中にしたいです。少なくともこの室内ではその一歩を。好きな映画の話をすることは、私たちにとって手近にできる唯一の世直しかもしれません。(説教くさくなくて、いいでしょう?)

 それでは、世界一権威のない映画賞、発表です。


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 ☆ quietroomの室内映画賞 【 作品賞 】

 
 『ファントム・スレッド』ポール・トーマス・アンダーソン


 授賞理由に代えて、選考委員会より『ファントム・スレッド』についての短い対話――

 友人yさん:『ファントム・スレッド』どういうところがよかった?
 m:血が出ないところじゃない、ひとつに決めるなら。
 友人yさん:出そうなシーンはあったけど削られてるね。(リンク:Camera Tests 6:20~*閲覧やや注意)
 m:こういうシーンも想定にあったんだね。もっとおもしろくできそうなところを、あえて抑えてるのがすごくわかる。流血する映画が全部駄目という意味ではないよ? ひとつその象徴としてね。
 友人yさん:ポール・トーマス・アンダーソンも最初から完全な世界観が頭の中にある状態で撮影に入ってるわけではないんだね。
 m:『ハードエイト』も『ファントム・スレッド』も衣装は同じ人なんだね。(リンク:「映画の衣装デザインの神髄」)信じられない。出来るって言ってから練習するスタイルだ、昔のリリー・フランキーさんみたいな。並大抵じゃない素養がありつつ、ノリとハッタリも欠かさない・・・
 友人yさん:一緒に成長していく感じ最高だなって胸が熱くなった。だから、大切なのはとにかく世に出て、その後にやり続けることだなあ。現代との接続も常にあるよね、PTAは。
 m:素晴らしいチームだね。yさんは他にどこがよかった?
 友人yさん:あの女優さん(ヴィッキー・クリープス)だよ、顔芸が見事で。セリフかなにかで説明するまでもなく顔とか音とかで全部伝えようとする意志とか。映画だなあ映像表現だなあと。言葉とか絶叫じゃなくて、顔で全て伝える。こんな素晴らしい俳優や演出あるかって。あとは、パラノイアの表現者を支える女性の姿、もしくはこの二者関係の具現化とか。
 m:ふたりの関係が変化していく描写はストーリーの核だしほんとうに見事。
 友人yさん:胸うたれまくり。泣きまくり。声上げて泣いたよ。
 (おわり)


 quietroomの室内映画賞 【 作品賞 】 ノミネート:
 『希望のかなた』アキ・カウリスマキ
 『ハッピーエンド』ミヒャエル・ハネケ
 『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』アシュリング・ウォルシュ
 『ザ・スクエア』リューベン・オストルンド
 『ファントム・スレッド』ポール・トーマス・アンダーソン
 『レディ・バード』グレタ・ガーウィグ
 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』ヴァレリー・ファリス&ジョナサン・デイトン
 (*だいたい公開順)


 
 『ハッピーエンド』ミヒャエル・ハネケ


 なんという豊作の一年だったでしょう・・・一位票は実は割れました。iは『ハッピーエンド』と『しあわせの絵の具』、mは『レディ・バード』。yさん登場ありがとう。誰もほんとはひとつだけ選べません。


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 ☆ quietroomの室内映画賞 【 監督賞 】

 
 『レディ・バード』グレタ・ガーウィグ

 「肯定の意思に貫かれたグレタのまなざしは、全てを包み込むほどに。こんなにやさしい映画を観たことがありません。グレタにこの賞を渡せることを、心より幸福に思います。」m(プレゼンテーター風、妄想スピーチ!)


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 どんどんと・・・

 quietroomの室内映画賞 【 脚本賞 】『レディ・バード』グレタ・ガーウィグ 【 作曲賞 】『レディ・バード』音楽:ジョン・ブライオン▶『レディ・バード』三冠! 【 脚色賞 】『勝手にふるえてろ』大九明子▶原作(綿矢りささんの同名の小説)の強度ある骨組みに積み上げられ、装飾されるのは、まさに映画のマジックとしか言いようのないものばかり。本当に素晴らしいです。 【 撮影賞 】『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』▶この映画はかなり苦手なのですが(でも、抗いがたい魅力があります・・)映像表現のネクストとして、まさに圧倒的なものがありました。 【 音響賞 】『わたしは、幸福(フェリシテ)』▶演奏、街の音、特に森の音、アフリカのカオスとある意味でのシンプルさが音で完璧に表現されていました。(だんだんとどの人に贈る賞かわからなくなってきました。門外漢ゆえのご無礼はご容赦ください。)

 ここで一息。

 【 美術賞 】『犬ヶ島』▶あまりにも凄すぎて、あと5回観ても消化できるかどうか。。 【 衣装デザイン賞 】『ファントム・スレッド』▶記事上部をご参照のほど。 【 ドキュメンタリー賞 】『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』▶ファブリックと花以上に、パートナーを愛する話でしょう? 【 視覚効果賞 】『キングスマン:ゴールデン・サークル』▶『キングスマン』大好きです! 今年何度も行った岡山にて。近年の「音楽そのもの」が物語を駆動する大作系作品(『ベイビー・ドライバー』や『キングスマン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ)は全て好きで、観るとどれももの凄く癒されます。 【 女優/男優 賞 】▶俳優の凄みも軽みも最も感じた『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の全員に。俳優ってすごい。。

 ここまで、ほとんど一日かけて書きました。【 ヘア&メイクアップ賞 】なども軽く答えられたらかっこいいのですが。あとはご教示ください、ということで。。


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 quietroomの室内映画賞 【 特別賞 】

 
 『最終目的地』ジェームズ・アイヴォリー (2009)

 最後は「新作」のくくりなく、今年観た作品の中から二本。『最終目的地』を再見したことから、アイヴォリー/イシグロ/真田広之/岡本喜八の流れに夏の二ヶ月を捧げることになりました。発見に次ぐ発見・・・冬季休業中は喜八監督のお墓参りに行きたいなと企んでいます。



 
 『ウェンディ&ルーシー』ケリー・ライヒャルト (2008)


 ベストオブベストです。あまりの素晴らしさに、言葉がありません。


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