blueprint / memories
ま だ 歩 き 出 さ な い
2022.9.5
画家の妻の島
 "The Phantom Island"


 



 あるときは、まったくの偶然から幻島が生まれることもある。ピーター・ヘイリンは1659年に出版した著書『宇宙史』の仲で、スペインの探検家ウォルター・ローリー卿によって捕らわれたペドロ・サルミエントの話にふれている。...



 



 ...ローリー卿は戦略的に有利と思われる場所にある一つの島に興味を持ち、マゼラン海峡の地図を手にしてサルミエントに島について尋ねたところ、彼は楽しげにこう返したという。



 



 ”この島はかつて画家の妻の島と呼ばれていた。要するにこういうことだ。画家が地図を描いたときに、隣にいた妻が自分の島を一つ描き加えてほしいとねだった。もしかすると彼女は以前から自分だけの島を持つという想像をふくらませていたのかもしれない。...



 


 



 ...つまり、地図には載っていても、実は存在しない島があるわけだ。言いにくいことだが、私たちがいつも使っている地図に、画家の妻はたくさんの島と、大陸にはたくさんの国まで持っていた。そんなものは、どれだけ探しても見つかるはずがない。”



 



 ...もっともらしく壁にかけられた、ありふれた印刷地図の中に、いったい、どれほどの幻が潜んでいるのだろうか。どんな架空の島、幻の山、想像上の国が事実としての仮面をかぶり、発見されないまま時が過ぎ去るのを待っているのだろう?




 text:"The Phantom Atlas"
 エドワード・ブルック=ヒッチング『世界をまどわせた地図』(関谷冬華 訳)より抜粋





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