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ま だ 歩 き 出 さ な い
2022.10.15
わたしの世界は変化するが、楡の木はじっと動かない
 "To The Lighthouse"


 



 ...わたしの世界は変化するが、楡の木はじっと動かない。...



 



 ...晩餐に刺激されて、何か流動するような感覚を持ってしまったけれど、もう一度すべてをきちんと秩序づけなければ。あれとこれの位置を正して、と考え続ける間も、彼女は知らず知らず、戸外の木々の静けさのもつ威厳に心打たれ、さらに、風に吹かれた楡の枝が(波を乗り切る船の舳先のように)毅然としてそそり立つさまに、思わず感嘆を覚えた。...



 



 ...どうやら風が出てきたようだ(彼女はしばらく窓の外を見ていた)。風のために、折り重なった木の葉が揺れて、その向こうに星が見えることがあり、また星たちの方でも、ふんだんに光を振りまき投げかけては、懸命に木の葉ごしに光を耀き出させようとしていた。...



 



 ...そう、じゃああれはうまくいったんだ、成し遂げられたんだわ。そして成し遂げられたものすべてがそうであるように、それもまた厳かなものとなった。おしゃべりや感情を洗い流してよく考えてみると、それはパーティーの最初からあったようにも思える。...



 



 ...ただ、はっきりと見えるようになったのは、やはりパーティーがすんだ後のことで、こうして目に見える形をもつことによって、それはあらゆるものに確かな安定感をもたらしていた。...



 




 text:"To The Lighthouse"
 ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(御輿哲也 訳)より抜粋





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