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blueprint / memories
ま だ 歩 き 出 さ な い
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2023.1.1
開け放たれた扉
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"Open Door"
...街や山やハイウェイで道がわからなくなったとき、あるいは自然のなかで迷ったときわたしは、未知との境に触れて研ぎ澄まされる感覚を味わう以上に深入りすることは決してしないような気がする。...
...わたしが好きなのは進むべき進路を離れて、自分の知っている範囲から出てみること、地図と合致しないコンパスの針や、出会った人のてんでばらばらな指南を材料にして別の道をみつけ、おまけの何マイルかを帰ってくることだ。...
...誰ひとり知る人のいない西部の町のモーテルでひとり過ごす夜、誰にも居場所を知られずに、壁にかけられた奇妙な絵や、花柄のベッドカバーやケーブルテレビに囲まれて、自分のバイオグラフィーを生きることから束の間の猶予をもらう、ベンヤミンに倣っていえば自分の居場所を知りつつ迷子になっている、そんな夜だ。...
...歩いて頂きを越え、あるいは車でカーブを曲がりながら、ここはみたことのない場所だとひとり思うとき。自宅にいるときでも、何年ものあいだ心にも留めなかった建物のディテールや通りの眺めが、実はこの場所を知っていたことなどないのだ、と語りかけてくるとき。...
...見失っていた近所の景色や墓地や生き物に気づかせ、慣れ親しんだものをふたたび見知らぬものに変えてゆくさまざまな物語。まわりのものすべてを拭い去ってしまうような会話。その日の気分や振る舞いのすべてに影響していたのだ、と後からふと気がつくような夢。...
...そんな迷子の経験は、道をふたたびみつけるための、あるいは別の道をみつけだすための出発のように思える。...
text:"Open Door"
レベッカ・ソルニット『迷うことについて』(東辻賢治郎 訳)より抜粋
(2023.1.1 初詣)
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