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blueprint / memories
ま だ 歩 き 出 さ な い
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2023.7.27
夜はやさし
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"Tender is the Night"
...その後すっかり夜が明けてからやっと彼女は帰途についた。すでにサン・シュルピス寺院の上には鳩が飛びまわっている。...
...期せずしてみんなの口から笑い声がもれた。こちらにとってはまだゆうべのつづきなのに、街の人々は明るい暑い朝だと思いこんでいるのだから。...
...「どうやらあたしもとっぴなお仲間にはいっちゃった」ローズマリーは考える。「でもディックがいないとちっともおもしろくない」
彼女は少し裏切られたような感じがして悲しくなったが、そのうちなにやら動くものが目についた。それはシャンゼリゼに運ばれてゆく満開の花をつけた巨大なマロニエの木で、いまは長いトラックにしばりつけられ、からだをゆすぶって笑い声をたてるばかり――すばらしい人が場ちがいのところに置かれながら、それでも自分のすばらしさを信じきっているような感じだった。...
...魅せられたようにその木をながめながら、ローズマリーはその木に共鳴していっしょに明るい笑い声をたてた。するとたちまち、なにもかもがすばらしく見えてきた。
text："Tender is the Night"
スコット・フィッツジェラルド『夜はやさし』（谷口陸男 訳）より抜粋
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